しゅいその「140文字だけじゃ伝えられない思い」

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初音ミクオリジナル曲『雪空模様』制作の裏側について

はじめに

私は毎年恒例で冬曲を投稿しているのですが、その雪シリーズもついに10曲目となりました。それが今回の曲です。楽曲紹介を書くのも2年ぶりになりますが、記念すべき10曲目を迎えたということもあり、こだわりポイントなどを紹介していきます。

今回もNTミクさんです

2年前に投稿した『マジカルスノーマーチ』以降、冬曲では「Whisper+」の歌声が活躍しています。今回はポップスということもあり、今までの冬曲ような穏やかな歌い方からがらっと変えて、元気で快活な歌い方を意識しています。

冬曲に限定しなければポップスは過去に何度もやっていて、例えば『3.9秒のメッセージソング (for NT)』や『MPがたりない!』などではポップな明るいミクさんの歌声になっています。特段いつもと調声を変えたわけではないのですが、そのポップス向けな歌い方を冬曲やWhisper+さんでやったらどうなるだろう、というのがこの『雪空模様』での実験でした。

「そもそもポップな歌い方って何?」と思われるかもしれませんが、私は「全体の音量変化はあまり付けない」「子音を長めにしてハキハキと」「アタックやリリースのタイミングで大きくピッチを揺らす」などを意識し、ポップスに合うように少しクセが強めな歌い方を目指して調声しています。

今年の雪ミクさんを全面にテーマに押し出しました

雪ミクさんが好きなら既にご存じのことかと思いますが、今年の衣装のテーマが「北海道の冬をイメージした空模様」になっています。そこからヒントを得て、「雪と空模様」をテーマに制作を開始しました。

過去の冬曲を思い返すと、歌詞に「空」というキーワードが入っているものは結構あります。気になって調べてみたところ、この曲を除く9曲中6曲は歌詞に「空」が含まれていました。(「空気」は除きます)ただしそれらは「雪の積もる道」や「雪が降る街」など、今までは基本的に目線は下のほうを向いているイメージのものが多いです。

そこで今回は目線を上に、「空」自体を目線の中心にして歌詞を書いていきました。真冬の冷たく感じる空、粉雪の舞う空、雲の流れる空、夜が明けていく空・・・移り変わり行く空をイメージしながら、歌詞に「空」という単語が実に8回も登場します。

空って季節・日・時間帯によって常に変化していて、見ていて飽きないですよね。冬曲に限らず歌詞に「空」という単語を思わず使ってしまうくらい、私も空が大好きです。

延々と空について語ってしまいましたが、実は「空」以外にも歌詞には重要なキーワードがあります。それは「夜明け」と「筆」です。

雪ミクさんの衣装をデザインした作者さんによると、夜明けをイメージした色合いとなっており、空を描くための大きな絵筆を持っているのが印象的です。

(参考)2023年ねんどろいど雪ミク衣装&ラビット・ユキネ衣装結果発表

piapro.jp

いつもはミクさんのイメージで音楽的な用語を並べたりしてましたが、今回は「色」「塗り」「筆」「落書き」などの絵に関係するキーワードを散りばめました。筆を持ったミクさんが皆を元気づけるといった、今までにはなかったような新しい話になったと思います。

当初は絵描きということで様々な色名を歌詞に散りばめる予定でしたが、空は季節・地域・時間など様々な条件によってその色が異なるので、聴く人のイメージに委ねた方が良いかと思い、あえて色名は入れずに他のキーワードで空の色を表現してみました。

また「夜明け」の暗い空から明るい空に移り変わっていく様子を、空を描く画家に重ねて描いていて、うつむく皆の表情をその画家が明るく元気づけてくれたら良いなという希望も歌詞に込めています。

こんな感じで今年の雪ミクさんを強く意識した楽曲に仕上がったと思います。

余談ですが、「雪ミクさんを強く意識した楽曲」としては2019年のプリンセスな雪ミクさんをイメージした『雪の国からのプリンセス』以来になると思います。もしそちらにも興味がありましたら、当時の楽曲紹介記事をご覧ください。

mahjong-medlay.hatenablog.com

メロディーは明るさの中にも少し哀愁を

今までの楽曲紹介であまりメロディーについて言及することはなかった気がしますが、今回は特にこだわったので触れておきます。

AメロやBメロは非常に悩みました。いつも通りの明るさ全開のしゅいそ節でも良かったのですが、ちょっとマンネリ気味ということもあり、少し哀愁を感じるコード進行で作ってみることにしました。するとサビとは一変、ほんの少し暗さを感じるような、色に例えるとライトグレー~ダークグレーのようなAメロBメロに仕上がりました。

Aメロのコード進行、実は以前に投稿した『雪の花咲く庭に』の中間部でも使っていたりします。(アレンジやメロディが違うので分かりづらいですが)

一方、サビの部分はほとんど悩まずにパッと書けましたが、ここは明るいメロディーなので元々は明るいコード進行で作っていました。しかしAメロBメロ同様、サビもマンネリ気味なのでここでも普段使わないコード進行を採用しました。

最近色んな曲でよく使われているコード進行なので、「このコード進行聞いたことがあるかも」と感じた方は音楽的センスが鋭いと思います。詳しくは「丸の内進行」(丸サ進行)で検索してみてください。

哀愁を感じる「夜」のAメロBメロ、明るさを感じる「朝」のサビが対比になっていて、結果としてメロディーでも「夜明け」を演出できたんじゃないかと思っています。

余談ですが曲を作るにあたり、一番最初に出来上がったのは意外にもサビではなく、何度もしつこく合いの手で入ってくる「ぱっぱっぱっぱらぱぱ」というキメの部分だったりします。メロディーというよりはむしろリズムですが、この合いの手が間に入ることを意識しつつ、他の部分を書き上げていきました。

アレンジはお祭り感を意識しました

冬というと気分が落ち込みがちですが、「空」がテーマということなので明るい曲調を意識してアレンジを組み立てていきました。

雪ミクさんと言えばやっぱり冬のイベント「SNOW MIKU」がメインなので、結局『雪の国からのプリンセス』と同じでお祭り感のある楽しいポップスに行き着きました。

ただ同じような曲に仕上げてもつまらないので、向こうが8ビートロックなのに対して、こちらはディスコビートで行くことにしました。サビではひたすら同じリズムパターンの繰り返しなので、よりノリやすく「お祭り感」があるのではないでしょうか。

アレンジと言えば、オケに入っている和楽器についても少し触れておきます。

この曲を制作開始した当時、和風曲として作るつもりはありませんでした。メロディーがヨナ抜きになっておらず、和風感がないのはこのときの名残です。

それでも三味線、尺八、太鼓と言った和楽器を使った理由としては、今年の和を感じさせる雪ミクさんの衣装デザインを見たとき、ふと楽曲に「和」らしさを感じさせる要素を入れたくなったからです。結果として洋風なメロディーに一見ミスマッチな和楽器が混ざったりして、和洋折衷な「お祭り感」をより強調できたんじゃないかと思っています。

アレンジの話題からは少し逸れますが、タイトルが漢字4文字となっているのも、同じく「和」を意識したものです。

今回こだわったというか、時間がかかったのはギターの音色です。

「ワウ」と呼ばれるフィルターが強めにかかった特徴的な音色に仕上げましたが、普段私が使わないフィルターということもあり調整に時間がかかりました。ワウのかかったギターって癖が強そうに感じますが、実は昔から結構使われていて、楽曲に面白い味付けをしてくれたりします。ワウギターを使ったミクさんの曲ってあまりないなと思っていて、面白そうなので今回使ってみました。(もし楽曲をご存じの方がいらっしゃいましたら、お知らせいただけると嬉しいです・・・!)

イラストについて

今回の雪ミクさんとユキネ氏のかわいいイラストはSa-fuさんに描いていただきました。大人の事情でここには載せられないので、Sa-fuさんの素敵なイラストはぜひ動画でご覧ください。

餅は餅屋・・・ではないですが、やっぱり私よりも絵師さんの方が遙かに上手なので、イラストにはあまり口を挟んでいません。ただ、空については結構こだわって色合いとかは色々注文してしまった気がします。そんな注文にも見事に応えてくださったSa-fuさんには感謝しかありません。この場を借りてお礼申し上げます。

映像ではサビで雪が降ってますが、これはSa-fuさんのアイディアで入れたものです。
お陰で素敵な動画に仕上がったと思います。

今まで雪ミクさんのイラストを他の方にお願いして描いてもらうということはほとんどありませんでしたが、2022年投稿の『マリンスノーヴォヤージュ』からは絵師さんにお願いして描いてもらうようにしています。

私よりも上手い人に描いてもらいたいというのもありますが、何より雪ミクさんが好きな絵師さんを一人でも多く応援したい、というのが一番の理由だったりもします。

最後に

雪シリーズ記念すべき10曲目の曲となりましたが、私なりに新しい要素を入れながら飽きられないように工夫して作ったつもりです。

今後も新しいことに挑戦しながら次の冬曲を書いていきたいと思いますので、どうかこれからもお付き合いいただければと思います。