しゅいその「140文字だけじゃ伝えられない思い」

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初音ミクオリジナル曲『スパイスノーミッション』制作の裏側について

はじめに

前回の新曲からだいぶ間隔空いてしまいましたが、毎年恒例ということで何とか今年も冬曲を投稿できました。ブログのほうも久々になってしまったということで、新曲紹介を書いていきたいと思います。

今回はテーマに苦慮しました

私が今までの冬曲を制作するとき、その年度の雪ミクさんのテーマやモチーフなどから冬や雪に繋げて歌詞を書いてきました。例えば2023年の「空模様」であれば移り変わる冬空、2019年の「プリンセス」であれば冬をお祝いする祭のワクワク感、と言った感じです。

今年はと言うと、テーマが「北海道の冬をイメージしたごちそう」となっており、衣装も「スープカレー」がモチーフとなっています。幻想的な雪景色に急に温かい食べ物を出したところで不自然ですし、冬の祭にしてもスープカレーが定番の食べ物かというと、私自身あまりイメージが湧きません。屋内でゆったりと味わう食べ物のイメージですし。

いっそ冬や雪をメインに置いて食べ物をサブにすることも考えたのですが、それだと今年の雪ミクさんでやる意味がないかなと。そこで「スープカレー」をメインに置き、冬や雪は少し添える程度のバランスにすることにしました。結果として私の過去の冬曲と比べても異色で、個性的な冬曲ができあがったのだと思います。

なぜ「スパイ」なのか?

私はいつも楽曲のタイトルを決めるときは楽曲(というより歌詞)が完成した後に付ける派なのですが、今回は制作を開始する前、一番最初にタイトルを考えました。
前述のとおりテーマが迷子になりそうだったので、そのテーマをしっかりと表すタイトルを付けることで制作のゴールを明確にしようと思ったのです。

まず、これは雪ミクさんの曲なので「雪」「スノー」は入れたいなというのは当初から考えていました。また食べ物がテーマなのでそれを連想させるキーワードも入れようと。

ソルト(塩)だと雪っぽくて良さそうだけどスープカレーにはあまり結びつかないし、「スープカレーの歌」だとあまりに安直すぎる。そこで「スープカレー」→「スパイス、スパイシー」と少し形を変えて入れることに。「スノースパイス」「スパイシースノー」だといまいち楽曲の雰囲気が伝わりづらい。スパイススノー・・・スパイスノー?No spiceとSpy snowがダジャレになってて面白いかも、ということでネタ曲で行く方針はこのとき決まりました。

スパイスは分かるとしてスパイって何だろう?と色々考えを巡らせたところ、単純な私は「スパイ映画で行こう」と考えました。単に「スパイスノー」というタイトルでも良かったのですが「スパイス/ノー」で区切るとスパイ感が薄れてしまうので、スパイを連想させるキーワードをくっつけました。それが今のタイトルです。

「スパイスノージャズ」とかも候補に挙がったのですが、私はいつも動画のタイトルにジャンルを入れていてしつこいかなと思ったので、歌詞の世界観が伝わりやすそうなキーワードを選びました。

歌詞について色々

ダジャレが効いたタイトルなので、スパイ映画バリバリのシリアスな雰囲気というよりも、一見カッコ良いけど実はただグルメ巡りをしているだけというミスマッチ感を狙ってみました。

一応雪ミクさんの曲なので、食べ物やスパイに極振りせず程よく冬や雪のキーワードを散らすことも意識しています。ただ前述のとおりスープカレーと冬の景色が直接結び付いているわけではないので、あくまで物語を彩る一要素として登場するのみとなっています。そこは当初の方針からブレないように、というところですね。

歌詞中には「スープカレー」「カレー」というキーワードはあえて入れていません。聴き手が歌詞から好きな料理を思い浮かべてくれたら良いんじゃないかと。スパイにとって重要なキーワードって暗号にしますし、「S.P.I.C.E」というワードに変換して何度も登場します。香辛料をただ英語にしただけですね。一方で「例のブツ」「作戦コード」「追跡」のような、スパイっぽい用語を散らしてみたり。

Cメロはかなり遊びました。普通に聴く分なら違和感はないかもですが、登場する食材がなぜか「NJN(ニンジン)」「JGM(ジャガイモ)」のようにアルファベット3文字で表記されています。(特にOSR=お皿はなかなか酷くて個人的に好きです)まあ明らかな日本語ですが「ニ(ン)ジ(ン)」「ジャガ(イ)モ」のように、逆にカタコトで歌わせてみました。ネタ曲なので遊ぶときはとことん!です!

それ以外にもスープカレー定番の食材として、カボチャ、ピーマン、ナス、ブロッコリーとかも出そうかと思ったのですが、札幌のスープカレーを調べてみるとお店によって結構具材が違ったりするのですよね。なので無難にどのスープカレーにも入ってそうな食材のみに絞りました。いずれも家庭で作るようなルウカレーにも入っていて馴染みのありそうな食材たちですし。

あとスパイ映画をオマージュしたネタとかも入れたかったのですが、私自身そこまでスパイものに詳しくないですし、皆さんそれぞれが持っているスパイ像も違うと思うのでこちらは断念しました。

今回はジャズです

テーマは既に決まりましたが、スパイ風って何?と思った私は「スパイを感じる音楽」についてちょっと調べてみました。ネットって広いものでそのものズバリの音楽研究をしているサイトを見つけました。

classic-variations.com

スパイを感じる楽曲の紹介、そしてそれを感じさせる各要素について研究されていて実に興味深いページです。どの楽曲を意識したとかはあえて伏せておきますが、おおよその共通項としてジャズであることがスパイっぽさの条件じゃないかなと思っています。そんなわけでジャズで行くことにしました。

ジャズというジャンルはかなり広いものでして、例えば拙作「白い雪のおくりもの」はスウィングする3拍子のジャズ(ジャズワルツと言います)でしたが、今回はラテンジャズというジャンルを意識しています。お洒落な雰囲気の中にも情熱的なラテンのリズムが光る・・・まさに野菜の旨味の中に感じるピリッとした刺激のスープカレーのようで、今回のテーマと相性良いんじゃないでしょうか。(我ながらうまいこと言いました。スープカレーだけに)

「白い雪のおくりもの」はジャズ初挑戦ということもあり色々試行錯誤していた時期の作品で、今思うともう少しジャズっぽくできたんじゃないかと思うこともありましたが、今回はより「ジャズらしさ」に近づけるように、コード進行だったり展開だったり色々とジャズについて研究しました。不協和音を入れたり、展開にメリハリを出したりとか、その研究の成果ですかね。

「白い雪のおくりもの」とは対照的に、こちらは派手なジャズなのでブラスとかも気合入れて打ち込んでます。またウインドシンセが活躍してますね。ブラスで盛り上がる部分だけでなく、2:50あたりから静かになるところのピアノが個人的には気に入ってたりもします。

苦労したところとしては全体的にリズムが難解でして、リズム感がない私にとってリズムを取るのが結構難しかったです。こんなリズム難な曲ですら余裕で歌いこなしてしまうミクさんって、やっぱり凄いですね。

歌詞がとことんネタ曲ですが、楽曲自体はかなりカッコ良く!を意識していました。曲がカッコ良くなればなるほどミスマッチ感が増して、かえってネタらしさが増すかなと思ったのです。例えるなら、真顔でギャグをやっているような面白さといったところでしょうか。気合入れて作ったので、「オケだけはカッコ良い」と思っていただけたらこの上なく嬉しいです!

メロディー作りについて

今まであまりメロディー作りの具体的な作業について書いてなかった気がしますが、私は普段頭の中でメロディーを練ります。DAW(楽曲を制作するソフト)に向かってマウスをポチポチしたり、鍵盤をかき鳴らしているときにメロディーが浮かぶこともありますが、ほぼ大部分は頭の中で練ることが多いです。

頭の中で何度も反復して、これだ!と思うフレーズまで仕上げてから初めてDAWや鍵盤に向かいます。ただ私自身が音痴なせいか頭の中のメロディーをアウトプットするのが苦手で、この作業がどうしても時間がかかります。メロディーを思い付いたらすぐにメモを取る方もいるそうですが、私はこの方法でメロディーを忘れたことはないのでメモは取ったりしません。私は途中でメモを取ってしまうとそこで飽きてしまい、最後まで完成させないことが多かったりするので、この方法を採用しています。

ジャズと言うとお洒落なイメージがありますが、色々ジャズを聴いているとポップなジャズというのもあるんですよね。歌モノですし、今回も私お得意の(?)ポップなメロディーを意識して書きました。

Aメロのクールな雰囲気のメロディーと、Bメロの一気に広がった明るいメロディーの対比とかは頭の中でしっかり練っておいたせいか、ばっちりハマった気がします。

最後に

雪シリーズとしては雪感が薄目+ネタ曲+カッコ良いオケと異色な冬曲に仕上がりましたが、同じものばかり作り続けても面白味が無いかなと思って毎年工夫した結果だと思っています。

来年の雪ミクさんも決まってない中で気が早いですが、また次の冬もまだ見ぬ新しい冬曲を生み出せたらなと思います。次の冬曲でまた会いましょう!(冬曲以外も作ってますので、興味があればそちらもぜひ)